競技性

1.はじめに

 初めに記事の内容を要約してしまうと、「今の遊戯王の選考会制度にはあまり競技性は無いのではないか」という内容です。誤解されないうちに書いておくと、日本代表や世界優勝を目指すプレイヤー、あるいはその行為に対して負の感情も意図も無いことを明示しておきます。

 では"競技性"とは何か。いくつか定義はあると思いますが、ここでは「これまでの経験、知識、鍛練が成果に結び付きやすいかどうか」を指します。「運要素がどれだけ絡まないか」と書き換えても問題はないのではないでしょうか。例えばコイン投げの裏表当てゲームに競技性はありませんし、将棋などは"競技性の極地"だと思います。

 また、いわゆる"CS"にはある程度競技性があると思ってます(ある程度と銘打ったのは、流石に将棋などのゲームには競技性が劣るからという意味です)。詳しくは後述しますが、簡単に言うと選考システムに運要素が比較的少ないからです。

 加えて言っておくと僕はいわゆる"トーナメントプレイヤー"ではありません。選考会の制度が変わったところで、僕はブロック戦すら勝てないのではないかと思います。「自分が勝てないのは制度が悪いから」などと言うつもりは毛頭ありません。

 少し話が逸れました。次の章から実際に説明していこうかと思います。センシティブな内容でもありますので、誤解を招かないように少々補足を挟みます。

2.序論

 競技性が乏しいと思う理由はいくつかあります。ここで説明するのは、(選考に際する)システム面・ゲーム性・公式の姿勢です。それぞれ関連しますが、順に説明します。

3.1.本論a:システム面について

 まずシステム面。現在日本代表になるには、各店舗で行われている店舗代表決定戦を勝ち抜き、後日行われるブロック代表を無敗で終え、その後日、(今現在ちょうどこの時期ですが、)日本代表選考会で全勝しなければいけません。これは相当厳しい道のりで、負けはほとんど許されません。店舗代表決定戦のみ複数出ることができますが、抽選やそもそもの回数の都合もあり、そう負けることはできません。

 これが、運要素がほとんど無い将棋においてのシステムならまだしも、世界的ゲームである遊戯王の日本代表決定までの道のりで、"運負け"の一つも許されないというのは競技性を欠いていると思います(ちなみに自分は運要素の無いゲームは苦手です。"余談"に置いておきます)。

 また、昔の日本代表選考会出場制度は今とは違い、期間中の公認大会で30勝0敗以上の成績を稼ぎ、そのボーダー以上からは成績上位順に選考会に招待されるというものでした(確かそうだったはずです、違ったら申し訳ありません)。

 今と比べさらに厳しい条件かと思います。しかしこの頃は今ほど競技性の乏しさを感じませんでした(その頃競技性について考える機会がなかったというのもありますが)。

この理由というのがゲーム性の面と繋がるので、次に続きます。

3.2.本論b:ゲーム性の面について

 ゲーム性の面について説明します。いくら連勝数を要求されても、そのゲーム一つ一つが競技的なものだったのならば納得がいきます(過去のシステムもそれで納得していたのだと思います)。勘の良い人ははもしかしたら察しがついたかもしれませんが、私が言いたいのは現在の遊戯王カードゲームの運要素が強いということです。

 少し断定的な表現を使いますが、魔術師ミラーのメイン戦は先行の展開をほとんど後攻は返せませんし、ユニオンの先行エクストラリンク展開は通ってしまえばほとんどのデッキが匙を投げます。サイド戦に至ってもサイドカードを引けなければ負け、場合によっては1枚引いた程度じゃ返せないこともあります。そんなことがしばしば起こる中、日本代表決定まで(場合によっては世界大会優勝まで)負けが許されないのというのはやはり競技性を若干欠いているように思います(もちろんユーザーはそのような負けを起こさないために手札誘発などを多く入れるなどデッキ調整をするのでしょうが、いくら手札誘発を入れても引かずにあちらの展開はすんなり通ってしまうこともある、というのはみなさんの方が経験していると思います)。

 ここで異論がある方もいるかと思いますので、補足に続きます。

 

3.2.1.補足

(書いているうちにかなり長くなってしまいました、次の異論を持たなければ読み飛ばしても結構です)

 「最近の環境はしっかりしているし、本当に昔は競技性が高かったのか」「選考会代表は運が良かったと言いたいのか」などの異論があるかもしれません。前者については概ね仰る通りで、後者に関しては全くそのような意図はないことを記しておきます。

 実際、最近の環境は以前(どこを指しても異論があると思うのであえて伏せておきますが、先行の展開がかなり安定していてしかも後攻はそれを返すことがほとんどできないような環境です。「そんなものはなかった」と、言う人もいるかもしれませんが・・・)に比べてかなり良い環境で、実力差も出やすい環境だと思っています。ユニオンや魔術師は先行展開の強度と引き換えに(覆いがたい)ミスのしやすさや不安定さがあり、使用者もそこまで多くはありません。また閃刀姫ミラーはかなり良いゲームとも聞きます(これはあくまで伝聞です)。しかしやはり「ほとんど完璧にデッキを練っても、魔術師やユニオン相手には先行を取られるだけで負けてしまう」事象は起こりうるのです。

 また昔の環境が一概に競技性が高い、つまり運要素が少なかったかと言われればそうでもないでしょう。11年選考会環境において門結束カゲキ影武者から六武衆を数体並べられ、罠も敷かれそのまま負け。あるいは先行数枚ドロークェーサーを返せずそのまま負け。08年選考会環境では先行で寒波猫早埋などを持たれたらなかなか返せません(あくまでゲートボール=過去環境追体験の知識です)。そういった"クソゲー"は各年代に散らばっています。しかし、これはマッチ単位で連続して起こることはそうそうありませんでした、というのはゲートボールにおいてそうだっただけですが、"クソゲー"2回でゲームが終わることは今に比べてそうそう無かったのではないかと思われます。

 (補足の補足・・・もしくは私が誤解しているだけで昔から競技性は乏しかったのかもしれません。この辺りの認識は一人一人で違うと思うので任せますが、私が特に言いたいのはまず今現在、競技性に乏しいといったことです。)

 また、選考会代表が運が強いだけだなどとは全く思っていません。十数連勝を重ねることは明確に運だけでは不可能ですし、またこれは選考会常連、世界大会出場経験もある強豪(と言って差し支えないでしょう)のH氏、一応伏せさせていただきます、が東日本選考会で代表になったことからも、選考のシステムに競技性は「ある」ことが言えます。また北海道代表Kくんは知り合いですが、日頃から調整をしていたようなので納得です(私の住まいの変更で近況は分からないので、これも伝聞になってしまいますが・・・)。もう一人の方については申し訳ありません、あまり存じ上げませんが、CSの上位常連プレイヤーだと聞いています。

 やはり、選考のシステムに競技性が全く無いとは流石に言いませんし、ゲーム性などを正式に評価するともしかしたら今より競技性が低い年代が多くあった可能性すらあります。そうなってしまうと私の「ゲーム性」についての批判は、遊戯王というゲームで上位プレイヤーを決める上では的外れな可能性もありますが・・・。「そもそも遊戯王というゲームは運要素が強いんだから、競技性を求めるのは間違い」なのかもしれません。しかしそれでも僕は、過去どうだったかは関係なく、もしくは過去のどの時以上より、遊戯王の競技性が高い環境、というのを望んでいます。

 とりあえず、下では本論の主張(=現在の環境は運要素が強い)が通っているものとして続けさせていただきます。

 

3.3.本論c:公式の姿勢

 補足が長くなってしまいました。面倒くさくて読み飛ばした方も理解できるように論を進めていく(ように心がける)次第です。

 話を続けます。「公式の姿勢」というのもまだ「世界的カードゲーム」然とはしていないと思います。見返りを考えると店舗代表の段階で、とは言いませんが、ブロック代表では公式が派遣したジャッジを数人、日本代表決定戦では各卓にジャッジをつけてほしいものです(それは企業としては難しいことなのかもしれませんが・・・)。ブロック代表の試合を観戦していると大事な局面で店員が裁定ミスをしているシーンを目撃しました。公式ジャッジならば起こらなかったのではなかったかなと思います。また、これは触れづらいことですが・・・、昨年の選考会では、悪質とも言える遅延が横行したと聞きます。全卓にジャッジがついていれば起こらなかったのではないでしょうか。ちなみに僕は”意図的な遅延”は真っ向から批判する立場です。(隅から隅まで読み通した訳ではなく、間違った見解かもしれませんが、)昨年のこれを受けてか2018年の公式大会規定では遅延に対する罰則が明記されています。

 また、少し違った考え方になりますが、公式はカジュアル層向けの姿勢をより強くしている面があると思います。某サテライトショップでの交流会イベントは200人に迫るほどの来場者数を記録した(ただの一店舗が一日でです)らしいですし、実利的な話でカジュアル層の方が"良い客"だと思うので、そういう意味では競技性を望むことすら贅沢なのかもしれません。

 と、ここまで姿勢を批判し、「公式は競技層に冷たい」かのような言い方に聞こえたかもしれませんが、最近はこの公式の姿勢も大分競技層に寄ったものになっていると思います。インストラクターがジャッジに着く様子も散見されてますし(彼らの信用性は一旦置いておくとして)、このままジャッジ制度も充実していけば、競技性が重視される大会ごとにジャッジが置かれ、先ほど語った理想が現実になることも遠くないのかもしれません。大会中継の解説などが充実すれば、世界大会の実況は僕が理想としている(これはまた別の記事で語りたいところですが)、カジュアル層と競技層が合同で楽しめるイベントになるのかもしれないと思います。

4.まとめ

 ここまで、システム・ゲーム性・公式の姿勢の面から現在の遊戯王の競技性を批判してきました。公式の姿勢は改善されてきています。ゲーム性については、公式に任せるしかないでしょう。また最近の環境もそこまで悪いとは思わないので(3.2.では悪い面ばかり批判してしまったような気もしますが)、これも改善されてきているといっていいでしょう。やはりシステム面に関してで、個人的に一番の問題だと思っている「勝ち抜きシステム」をどうにか改善したいところです。

 ではどう改善すれば良いか。私はDay1,Day2形式が良いと思っていて、これはHatti Grand ChampionshipやポケモンWCS(過去のものなので、現在どうかについては定かでないです)、シャドーバースのRAGEだったかと思いますが、それらの大会を見て感じました。Day1で優秀な成績(≠全勝、ダブル・トリプルエリミネーションなどの形式が一般的かと思います)を残したものがDay2に出場でき、そこでは場合によってはトーナメント形式になりますが、雌雄を決するといったものです。各地での"CS"でも似た形式は取られてるかと思います。この形式でも、やはり"完全な"運要素の撤廃は不可能でしょう。と言ってもおそらく私はそれを望んでいるのではなくて(それならば将棋をやればいいという話なので)、限界まで運要素を切り詰めた中で、ゲーム中わずかに生まれた僅差を運で決定づけるというゲームがしたいのです。この辺りは若干ちぐはぐに聞こえるかもしれませんが、前提として運要素が大きく勝負に影響するというのと、実力が均衡している中に運要素が勝負を分ける要因の一つに"なりうる"というのは大きく違う、と私は思っています。

 少し話を戻して、Day2で5回戦マッチを行うというのも良い方法だと思います。これはHatti Grand Championshipで取られていた手法ですが、メイン戦で2回、サイド戦を3回行うというのは競技性を明確に上昇させている("運負け"で終わりということは流石にほとんど無くなり、実力の単純な比較になるのではないか)と思います。

 私独自の発想では無いですが、私の理想の選考会勝負形式を紹介させていただきました。手間や人数選別の都合上、ブロック戦までは勝ち抜きを要求しても然程問題はないとは思いますが、選考会ぐらいは、1敗2敗程度許してもいいのではないかと思っています。そして代表決定の最後の1,2試合はより競技的な5戦マッチを採用してみては、と思います。

5.最後に

 補足が長くなったり、話が行ったり来たりしましたがこれにて主張は終わりです。

 誤解されないように示しておきますが、どれも「今の公式に対するネガティブな批判」ではなく、「これからの公式へのポジティブな願望」です。この願望が届き実現するとは流石に思っておりませんが、それでも、ただ遊戯王の競技性が上昇することを願うものです。

 最後になりましたが、日本代表に選考された御三方本当におめでとうございます。日本の遊戯王プレイヤー全員の思いを乗せて、世界大会でも頑張ってほしいと思います。

余談:運要素のないゲームが苦手という話について。先ほども書きましたが、私は均衡した実力が運によって差がついたり、時に実力差を運で巻き返したりというのが好きです(後者は"日本代表選考会"には相応しくないということから誤解を招くので先述しませんでしたが)。また、明け透けに言ってしまえば将棋では強い人に勝てません。しかし遊戯王ではある程度実力差があっても引きで逆転することができます。もちろん調整では"実力"を上げるよう努めますが、それでも埋められなかった差が、一回の勝負の中では埋まるかもしれません。また順当に実力で相手に勝った時も、調整の甲斐あったと実感できて喜びを感じます。そういった意味で私はこのゲームが好きで、"格上"に勝った時や"格下"(比較の為に響きが悪い言葉になってしまいましたが、"調整で自分よりも実力を上げられなかった人"程度の意味に取ってください)に勝った時も嬉しいです。逆に運要素のないゲームはどうしても埋められない差がもどかしくてあまり好きになれません。